急性前立腺炎

急性前立腺炎は男性ならではの尿路感染症ですが、女性の膀胱炎ほど知られていないため、前立腺炎と分からず、悪化して受診されることも多い病気です。高齢(65才以上)の方が半数以上ですが、35才未満の方でも罹患することがあります。
男性は女性と比べて肛門と尿道の距離が長いため、大腸菌などの細菌が尿道から入り込むことはそこまで多くありません。細菌が入り込んだ場合も膀胱炎が起こることは少なく、膀胱に至る途中にある精巣上体や前立腺で細菌が増え、急性前立腺炎が起こります。
急性前立腺炎と慢性前立腺炎は別の病気であり、診断・治療は一部オーバーラップする部分はあるものの異なります(詳しくは慢性前立腺炎のページをご確認ください)。
急性前立腺炎の症状
- 排尿時に痛みを感じる
- 排尿しづらい
- 排尿回数が増えた
- 発熱の症状がある
- 会陰部(肛門と陰嚢の間の部分)がかなり痛い
急性前立腺炎を発症すると、前立腺が炎症によって大きく腫れ上がります。そして、排尿時に激しい痛みが生じ、腫れ上がった前立腺が膀胱を刺激して排尿回数が増えたり、尿の出口が狭くなることで排尿しづらくなったりします。高齢の方では、あまり痛みが出ず、急に排尿の回数が四六時中トイレに行かないといけないほど増えたという症状で出現し、後から発熱が出現することもあります。
急性前立腺炎と女性の膀胱炎では似た症状が起こりますが、急性前立腺炎では発熱の症状を伴うことも多々あります。微熱の場合もありますが、発熱すると38℃以上の高熱が起こり、寒気などが起こります。高齢の方や持病がある方、細菌の勢いが非常に強い場合などは、細菌が全身の血液まで回り(敗血症)、食欲低下や意識が朦朧とするような重症の状態に進行することもあります。このような強い症状がある場合は速やかな治療が必要です。
急性前立腺炎の診断
まず尿検査を行います。急性前立腺炎では尿検査で体がばい菌と戦う部隊である白血球が多くみられます。尿の通り道がただれて血尿が見られることもあります。
直腸診を行うこともあります。急性前立腺炎では前立腺が大きく腫れ上がります。指を肛門から挿入し、前立腺を触診すると強い痛みが生じるため、このような特徴から診断することが可能ですが、症状が悪化することもあるため、行うかは慎重に判断します。
他にも、重症度を判定する血液検査やどのような細菌が原因か調べる尿培養検査を行います。
また、前立腺肥大症などによって残尿が多く、感染の一因になっていることもあるため、残尿や前立腺肥大症の有無を確認する超音波検査を行うことがあります。
急性前立腺炎の原因
尿道に大腸菌などが入り込むことで発症するケースが多いです。35才以下の方では、尿道炎の原因になるような、淋菌やクラミジアが原因になることもあります。
また、前立腺がんの診断として行う前立腺生検や膀胱内視鏡検査など、どうしても前立腺や尿の通り道に傷が多少ついてしまうような検査の後に、傷から細菌が入り発症する場合もあります。
急性前立腺炎の治療
治療では抗生剤の使用が必要になります。尿培養の検査が数日後に判明すれば、細菌に合った抗生剤に切り替えることもあります。
軽症であれば抗生剤の内服だけで改善する場合もありますが、重症であれば、抗生剤の点滴投与を要したり、入院が必要なケースもあります。
抗生剤の内服も他の尿の感染症に比べ2週間~4週間と長い期間服用が必要になることが多いです。スパッと良くならずストレスになる方も多いですが、時間がかかることも多いので、じっくり治していくことが大切です。