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投稿記事

医療情報補足:前立腺癌治療の新たな選択肢 プルヴィクトについて 

コラム

今週、前立腺がんの新しい治療が県内で初めて導入されたというニュースが静岡新聞に掲載され、話題になりました(2026年2月3日より浜松医療センターで導入)。
その治療の名前が、プルヴィクトです。

「新聞で聞いたことはあるけれど、どんな治療なの?」
「放射線を使うと聞いて少し不安」

このように感じている方も多いのではないでしょうか。実際、患者さんから御質問を受けることが何回かありましたので、ここでは、プルヴィクトがどのような治療なのかを分かりやすく説明します。

進行した前立腺癌の治療について

前立腺がんは、男性ホルモンの影響を受けて増えるがんです。
そのため進行した前立腺がんや転移をもつ前立腺癌の治療の基本は、男性ホルモンを抑える注射や飲み薬になります。

この治療は非常によく効き、多くの方で

  • がんが小さくなる
  • 血液検査の数値(PSA)が下がる
  • 痛みや排尿の症状が落ち着く

といった効果が見られます。

ただし、治療を長く続けていると、だんだん効きが弱くなってくることがあります。がんの中で、治療に抵抗するような勢力が増えてきて、がんの勢いが再燃するような状態です。
これは珍しいことではなく、前立腺がん治療ではよく経験される経過です。

その場合、

  • ・ さらに強力に男性ホルモンを抑える別の飲み薬(新規ホルモン剤)に切り替える
  • ・点滴の抗がん剤に変更する。
  •  

といった次の選択肢が検討されます。

プルヴィクトは「がんを探して治療する」新しい方法

前立腺がんの治療は、プルヴィクトは、これまでの治療とは少し考え方の違う治療です。

簡単に言うと、がん細胞の目印(PSMA)にくっつく薬に、治療用の放射線(ルテチウム-177)を載せて体内に届ける治療です。PSMAを多く出しているがんに集まり、そこで放射線が働いてがんをたたきます。
そのため治療前に、PSMA -PET検査(PSMAが出ているかを見るペット検査)で「狙えるタイプか」を確認するのが基本になります。

海外での位置づけ

代表的な臨床試験(VISION試験)では、ホルモン療法が効かなくなった転移を有する前立腺がん(転移性去勢抵抗性前立腺がん)で、PSMA陽性の方に、従来の新規ホルモン剤や抗がん剤治療の後に、プルヴィクトを行うことで、生存期間の延長や病勢進行の遅延が示されました。

この結果を背景に、海外ではホルモン薬の強化版:新規ホルモン剤を行った後の次の一手として普及してきた、というのが大きな流れです。

副作用は?(患者さんが知っておくと安心なポイント)

放射線治療薬と聞くと不安になりますが、ポイントは整理できます。
よく問題になるのは、血液の数値低下(貧血・白血球/血小板の低下)だるさ吐き気、そして唾液腺に集まる影響による口の渇きなどです。治療は通常、6週間ごとに点滴で最大6が基本です。
また、治療後しばらくは体液に微量の放射性物質が出るため、病院から説明される生活上の注意(トイレや接触の注意など)を守ることが大切です。

日本での導入と費用感:「薬価は高いが保険でカバーされ得る」

日本でもプルヴィクトは導入が進み、薬価収載として7.4GBq 1瓶あたり約338万円とされています。
標準的な投与は最大6回ですので、単純計算すると2,000万円規模になり得ます(実際の回数は体調や効果で変わります)。

ここで重要なのは、日本は公的医療保険の対象になり得るという点です。自己負担は「3割」だけでなく、さらに高額療養費制度によって、所得に応じて月ごとの自己負担上限が設けられます。結果として、「薬価は高いが、患者さんの実際の支払いは制度で一定範囲に抑えられる」可能性があります。
※上限額や申請方法は個人の状況で変わるため、治療開始前に病院の相談窓口で確認する必要があります。

実際には、年齢や収入に応じて月ごとの自己負担額に上限が設けられており、
「2,000万円をそのまま支払う」治療ではありません。

誰でも受けられる治療ではない

プルヴィクトは、すべての前立腺がん患者さんが対象になるわけではありません
基本的には転移があるような進んだ前立腺癌で、新規ホルモン治療でも効果が乏しくなってきたような状態に使用する治療方法です。

また、事前の検査で、「この治療が合うタイプかどうか」を確認したうえで判断されます。

そのため、
「今どの段階の治療なのか」「次にどんな選択肢があるのか」を知ることがとても大切です。

前立腺癌の治療方法はこの治療以外もかなり進歩しているため、主治医などとよく相談して行うことになります。

 まとめ

プルヴィクトは、海外ではすでにPSMA陽性の進行前立腺がんで治療成績を伸ばす選択肢として広がりつつあります。
一方で、PSMA PETで適応を見極めること血液検査で安全性を見ながら進めることがとても重要になります。

新聞で報道されるほど注目され、海外ではすでに実績のある治療が、日本でも選択肢として加わりました。
治療の幅が広がったことは、患者さんにとって大きな意味を持つと思います。

前立腺癌は、癌が進んだ状態でも治療の選択肢が毎年のように増えているため、悲観することなく治療に、向き合うことができることが多くなっています。

一方で、前立腺癌は早期で発見できるのに越したことはありませんので、採血(PSA)などで早期発見に努めていくことが重要です。


※本記事は一般的な医療情報を分かりやすくお伝えする目的で作成しています。治療の適応や詳細は主治医とご相談ください。