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衰えにどう向き合うか 〜イチロー選手の「箸の夢」から考えるフレイルと習慣化〜

コラム

師走になり、2025年は終わりを迎えますが、昨年末にテレビで放映されていた野球選手のイチローさん松井秀喜さん の対談が、今も強く印象に残っています。現役を引退したイチローさんが、高校生に対して「感性の重要性」を語る姿は、競技の世界を超えて多くの示唆を与えてくれました。

その中でなぜか印象に残ったのが、イチローさんが松井さんに語っていた夢の話です。夢の中で打席に立つ自分の手に、バットではなく箸が握られていたというエピソードです。イチローさんもなぜ箸なのか分からないと笑っていました。番組をご覧になっていた方もそれぞれ解釈があると思いますが、私はこの「箸」は、衰えていく肉体に対する無意識の“あがらい”を象徴しているのではないかと感じました。長年、自分の身体と極限まで向き合ってきたからこそ、わずかな変化や不安も鋭く感じ取る。その感性こそが、イチローさんらしさなのだと思います。

泌尿器科の診療でも、最近「フレイル」との関連が話題になることが増えています。排尿トラブルや夜間頻尿、性機能の低下なども、身体全体の衰えと無関係ではありません。それぞれの治療ももちろんですが、適切な食事・運動の継続が長期的に症状の悪化を防ぐのに重要なことがわかってきました。しかし、イチローさんほどストイックに自分を追い込んで立ち向かうことは、多くの方にとって現実的ではないでしょう。

そこで大切になるのが「習慣化」です。最近、長く持続できる行動変容の方法として、次の三つが有効だと報告されています。200万人以上の挫折と成功のデータをまとめた戸田大介さんの著書「継続する技術」によると、
一つ目は、目標をできるだけ低く設定すること
二つ目は、動けるときに動く(できるときに行う)こと
三つ目は、例外を設けないことです。

新年を迎えると、「今年こそは」と高い目標を掲げがちです。しかし、目標が高すぎると挫折しやすくなります。むしろ、あえて低く設定し、細く長く続けていく。その積み重ねが結果的に継続につながり、やがては自然と次の高い目標へ移行できるようになります。

日常の小さな習慣こそが、将来の健康を支える力になるのだと思います。2026年は楽過ぎると思うような目標からまず始めてみるのが良いかもしれません。