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前立腺炎(慢性)

  • 会陰部に痛みを感じる(睾丸とお尻の間の奥の方が痛い)
  • すぐにおしっこに行きたくなる
  • 排尿時に痛みを感じる
  • 射精時に違和感がある
  • 下腹部に鈍痛を感じる
  • 精巣(睾丸)、ペニスの先、鼠径部(足の付け根)に時々不快感を感じる

上記のような症状がある男性は、慢性前立腺炎の疑いがあります。

慢性前立腺炎という疾患を知っている方は少ないと思いますが、疫学調査では、成人男性の5%ほどが慢性前立腺の当てはまると言われています。実はこの疾患によって長期間苦しんでいる方は多数いらっしゃいますが、病気の認知度が低いことと、症状がどの科に受診して良いか分からない、分かったとしても下半身の悩みなので病院に受診しにくいなどの理由で治療出来ていないことも多いです。

慢性前立腺炎について

前立腺炎とは、文字通り前立腺で炎症が起こった状態のことです。
そして、慢性前立腺炎とは前立腺の炎症が慢性化している疾患のことです。

慢性前立腺炎は、以下のように「細菌性」と「非細菌性」に分類することがありますが、比率としては「非細菌性」の方が多いとされています。

細菌性

前立腺で細菌感染が生じることで発症しますが、原因菌が分からないことがあり、細菌による影響を明らかにできないことが多いです。前立腺液に細菌が検出されることもあります。

非細菌性

細菌感染以外が原因となる慢性前立腺炎です。

骨盤内の自律神経の機能亢進や前立腺がある骨盤の血流障害で炎症が生じることや、加齢に伴うホルモン環境の変化、前立腺肥大症のような疾患があり、前立腺に逆流して前立腺で炎症が起こることなどさまざまな原因が重なって起こると言われています。

原因

前立腺が機械的・持続的に刺激を受けたり、冷えやストレスなどによって起こりやすいです。
また、ストレス・睡眠不足・冷え・カフェインや香辛料などの刺激物の摂取・飲酒などによって症状が悪化する場合もあります。
さまざまな原因が重なって起こるため、特定の原因を特定できることは非常に少ないです。

症状

頻尿・残尿感などの排尿に関する症状と会陰部痛・排尿時痛・射精時の違和感・下腹部の違和感など痛み、もしくは不快感に関する症状があります。また、前立腺に炎症が起き、精液に血が混じることがあります。痛みが慢性的に長期に続くと、うつ傾向になったり、気力がなくなったりすることもあります。

様々な症状が起こりますが、慢性前立腺炎症状スコアという問診のスコアを活用することもあり、治療効果や重症度を定量的に判定することが可能となり、客観的なデータに基づく慢性前立腺炎の診断に繋がっています。

慢性的な辛い症状で日常生活に支障が出たり、日々辛い思いをすることも多いため、症状がどの程度日常生活に影響しているか確認します。

慢性前立腺炎症状スコア
質問 点数
はい いいえ
1) この 1 週間で、次にあげる場所に痛みや不快感を感じましたか。 直腸と精巣(こうがん)の間(会陰部) 1 0
精巣(こうがん) 1 0
ペニスの先(排尿以外の時に) 1 0
腰より下、恥骨や膀胱のあたり 1 0
2) この 1 週間で、次のようなことはありましたか。 排尿時の痛み、または灼けるような感じ 1 0
性的な絶頂期(射精)の間、またはその後の痛み、または灼けるような感じ 1 0
3) この 1 週間を通じて、上にあげた場所のいずれかが痛んだり、灼けるように感じたことはどのくらいありましたか。 まったくなかった 0
まれにあった 1
時々あった 2
しばしばあった 3
通常あった 4
常にあった 5
4)

この 1 週間を通じて、いまお伺いした様な症状があった日の痛みや不快感を平均すると、どれくらいになりますか。

全く痛くない これ以上の痛みはない
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

10

5) この 1 週間で、排尿後にまだ尿が残っている感じはありましたか。 まったくなかった 0
5 回に 1 回未満 1
2 回に 1 回未満 2
2 回に 1 回位 3
2 回に 1 回以上 4
ほとんどいつも 5
6) この 1 週間で、排尿後 2 時間以内に再度オシッコに行くことはありましたか。 まったくなかった 0
5 回に 1 回未満 1
2 回に 1 回未満 2
2 回に 1 回位 3
2 回に 1 回以上 4
ほとんどいつも 5
7) この 1 週間で、症状のために自分の日常生活がどの程度妨げられましたか。 なし 0
ほんの少し 1
ある程度 2
非常に 3
8) この 1 週間で、どのくらい自分の症状について悩んでいましたか。 なし 0
ほんの少し 1
ある程度 2
非常に 3
合計点
  • 軽度:0~9 点
  • 中等度:10~18点
  • 重度:19~31 点

検査・診断

慢性前立腺炎で起こる症状があった場合、同じような症状が起こる尿路結石、非淋菌性尿道炎などの性感染症、膀胱炎などの尿路感染症、精索静脈瘤、前立腺がんなどの除外診断をすることで、慢性前立腺炎と診断します。

検査

検査はじめに細菌感染の可能性を除外します。多少なりとも性感染症の可能性があれば、性感染症検査が必要です。また、50代以上の方は、腹部超音波検査によって前立腺肥大症を併発しているか確認します(前立腺肥大症に慢性前立腺炎を合併することは珍しくありません)。さらに、他の病気を疑う症状がある場合や尿検査などで血尿が見つかった方は、CT検査などを行うこともあります。

また、前立腺に炎症があるか直腸診を行うことがあります。

  • 尿検査
  • 腹部超音波検査

場合によっては以下も行います。

  • 腹部CT

治療

主に生活習慣の改善と薬物療法を行います。

生活習慣の改善

疲労や飲酒などのほかに精神的なストレスや骨盤の血流低下が関係しているため、生活習慣を見直すことで症状改善を目指します。

具体的には、飲酒や刺激物(カフェイン、唐辛子)の摂取を避ける、車の運転やデスクワークの際はこまめに休憩を取る、バイクや自転車の長時間の運転は控える、円座を使用するなどが重要です。
また、歩行や水泳などの運動や下半身を温める温浴を習慣化することも大切です。体に無理をさせないことを意識しましょう。
なお、生活習慣には個人差があるため、上記全てを改善することは難しいこともあると思います。

当院では、患者様それぞれの生活習慣に合わせて、負担にならない範囲で改善していけるようにサポートさせて頂きます。

薬物療法

慢性前立腺炎の原因は明確には分かっていないため、患者様の症状に応じた治療を行い症状をやわらげていきます。具体的には、前立腺の血流を改善するために炎症を抑えるために抗生物質や鎮痛剤、植物製剤などの抗炎症薬、漢方薬などのお薬を使用します。痛みが骨盤より広くなっている場合などは神経の痛みを抑えるお薬を使用します。前立腺肥大症を合併している方はα受容体遮断薬やPDE5阻害薬などの前立腺肥大症に使うお薬が有効なこともあります。痛みによってうつ症状などが強い場合は、精神科との連携を行います。

お薬の効き目についても、すぐに効果を実感できる方もいらっしゃる一方で、なかなか症状が改善せずに治療が長期にわたる方も多くいらっしゃいます。決定的にこれが絶対的に効果があるという治療方法がないのが悩ましい点で、お薬をいろいろと変更して対応していくことも多いです。

磁気治療

薬物療法の効果が乏しい場合は、磁気治療によって骨盤の中の血流を改善させます。