尿の濁りについて
正常な尿は少し黄色っぽい透明な色をしていますが、時々白く濁る(尿白濁)場合があります。食べ物の影響で一時的に起こる場合や、女性でおりものが混ざった場合などは大きな心配はいりません。しかし、尿白濁が数日経っても治らなかったり、黄色っぽい透明な尿に戻ってから再び白く濁ったりする場合は、何かしらの疾患によって起こっている恐れがあります。
尿白濁の原因
尿白濁の原因として、食生活や女性のおりもの・経血、疾患などが挙げられます。
疾患が原因となる場合、尿路結石症や性感染症などが多いです。
尿路結石症
腎臓結石や尿管結石などがあると尿の混濁がみられることがあります。尿の中にはリン酸やシュウ酸などの塩類が溶けており、溶けきれないと結晶化して尿の白濁としてみえます。結晶が集まって尿路結石になりますので、尿の白濁が続く場合は、尿路結石が潜んでいないか一度調べることが重要です。明らかな結石が検査してもない場合は、まだ見えるようなレベルの結晶にはなっていないため、飲水など普段からの予防を行っていくことになります。
女性ならではの原因
女性はおりものや経血が尿に混ざって白く濁る場合があります。基本的には、尿自体が濁っているわけではなく、尿におりものなどが混入しているだけなので、この場合大きな心配はいりません。また女性は膀胱炎の発症リスクが高いため、尿白濁だけでなく排尿時の痛みや頻尿など他の異常も起こっていれば、なるべく早めにご相談ください。
性行為などによる性感染症
クラミジアや淋菌などによる性感染症が原因で尿白濁が起こる場合があります。性行為から数日経って陰部のかゆみや排尿時痛に尿白濁も伴う場合は、当院までご相談ください。 性感染症の治療を受けないと、パートナーに感染し、将来的に不妊など重大な問題になる恐れもあります。また性感染症の場合、パートナーが感染しているとどちらか一方だけが治療しても、お互いを繰り返し感染させてしまうことがあります。これを「ピンポン感染」と言います。そのため、完治するまでパートナーと一緒に治療を受けることが大切です。女性の方は婦人科での治療が必要になります。
尿白濁の原因となる疾患
尿管や膀胱の結石、性感染症、腎盂腎炎・膀胱炎・尿道炎などの尿路感染症、腎結核、稀に進行した腎臓がん・膀胱がん・前立腺がんなどによって尿白濁が起こる場合があります。以下でそれぞれの疾患について詳しく解説いたします。
腎臓結石・尿管結石
リン酸やシュウ酸、尿酸などが多くなり過ぎると、カルシウムと結びついて結晶になり、石のように固い結石が生じます。結石は腎臓で生じ、数年単位で無症状で潜んでいることが多いです。尿路結石症の患者さんの尿にはリン酸やシュウ酸の結晶が多く含まれていることが多いため濁って見えることがあります。ただ、正常でも、尿が濃いと結晶がみられ濁って見えることもあります。
腎盂腎炎
(じんうじんえん)
膀胱炎が改善されず尿管の中を細菌が逆流し、腎臓の一部である腎盂で炎症が生じ、尿の中に白血球が混ざって尿白濁が起こります。他にも、血尿・排尿時痛・高熱・腰や背中の痛みなどの症状も起こります。腎盂腎炎は女性が発症しやすいため、注意が必要です。
急性膀胱炎
急性膀胱炎とは、外尿道口から入り込んだ細菌が尿によって流されることなく膀胱まで届き、膀胱粘膜で炎症が生じた状態です。腎盂腎炎と同じく、尿の中に白血球が混ざって尿白濁が起こります。他にも、血尿・排尿時痛・頻尿などの症状が起こります。女性は体の構造上の問題で尿道が短いため、男性よりも発症しやすいとされています。
男性の尿道炎
細菌が外尿道口から入り込んで尿道に感染し、炎症が生じた状態のことです。尿に膿が混じることで尿白濁が起こります。他にも、かゆみ・排尿時痛・外尿道口の赤い腫れなどの症状が起こります。なお、排尿し始めたタイミングで強い痛みが起こる場合、クラミジアや淋菌などの性感染症の疑いがあるため、ご注意ください。
男性の淋菌感染症
淋菌感染症は男女で症状が異なります。男性は尿道炎のリスクが高く、尿白濁が起こります。また、排尿の始めに強い痛みが生じるなど明確な症状が起こりますが、女性は自覚症状が少ないとされています。
男性の
性器クラミジア感染症
クラミジアは細菌の仲間であり、性器クラミジア感染症は性行為によって感染する病気です。男性の場合、尿道に炎症が生じて尿白濁が起こります。また外尿道口から膿が出たり、排尿の始めに淋病よりは軽度の痛みを感じたりなど、明確な症状が起こります。一方、女性は感染しても自覚症状が少ないとされています。放置すると不妊症に繋がったり、妊娠中に胎児へうつったりする恐れもあります。
前立腺炎
前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱のすぐ下で尿道を取り囲んでいます。
前立腺で細菌が感染し、炎症が生じる病気を急性前立腺炎と言います。
急性前立腺炎は、思春期以降の男性であればどなたにでも起こる恐れがあります。尿白濁・残尿感・頻尿などが主な症状です。悪化すると、排尿時の激しい痛み・高熱・悪寒などが起こります。高齢の方や持病がある方では、敗血症という命に関わる状態になる場合もあります。そのため、早期発見・早期治療が大切です。
膀胱がん・前立腺がん
前立腺がんや尿路のがんは、初期には自覚症状がほとんどないことが多いですが、進行するとがんの表面にばい菌がついたり、組織がこぼれおちて尿白濁が起こる場合があります。通常これらのがんが進行する際は、尿混濁だけではなく、血尿や排尿困難など他の症状も出現します。このような症状が出現した場合は、なるべく早めに当院までご相談ください。前立腺がんは、血液検査でPSAマーカーという腫瘍マーカーの数値で調べることができます。
尿白濁の検査
尿白濁があれば、問診だけでなく尿検査(顕微鏡検査・細菌培養検査)などを行うことで、目視では分からない濁りも見つけられるようにします。
顕微鏡で尿混濁があっても、問題ないこともあります。糖尿病の方では、顕微鏡レベルで尿混濁(尿中白血球)を認めることが時々ありますが、症状がなければ経過観察になります。一方、他の痛みなどの症状がある場合、尿路感染症の可能性があるため、治療が必要になることもあります。
尿白濁の治療
尿の濁りは、医学的に問題ないことも多いですが、何らかの疾患の兆候である場合もあります。なかには、放っておくとやっかいな状態を引き起こす病気もありますので、尿白濁を見つけたら当院までご相談ください。 また、性感染症の症状として尿白濁が起こる場合もあります。なお、クラミジアや淋菌などの性感染症が分かった場合は、必ずパートナーの方も検査を受けてください(女性の方は婦人科受診になります)。