精巣(陰部)の痛みについて

精巣は精子を生成する大切な働きをする生殖器であり、男性のみにあります。精巣や陰嚢、睾丸に痛みがあってもなかなか受診しづらいと思いますが、深刻な病気によって起こっていることもありますので、一度当院までご相談ください。
以下のような症状は
ありませんか?
- 片方の睾丸に痛みがある
- 睾丸の鈍い痛みがある
- 睾丸が重く感じて痛む
- 精巣が腫れて痛みがある
- 睾丸を触ると痛い
- 動くと痛みが生じる
- 歩くと睾丸が痛い
- 精巣付近が圧迫されるように痛い
- ズキズキする痛みが長引いている
- 安静にしていても睾丸にジンジンする痛みがある
など
精巣の痛みが起こる病気
精巣腫瘍(精巣がん)
精巣腫瘍(精巣がん)そのもので痛みが生じることはありませんが、精巣が大きく硬くなります。左右の精巣のサイズが違うことから病院に行き、精巣腫瘍(精巣がんが見つかることも多いです。超音波検査によって精巣の形やサイズ、内部に腫瘍があるかを調べることが可能です。精巣腫瘍の診断になる場合は、基本的には病院で精巣を摘除する手術を行った上で更に詳しく調べることが必要になります。
精巣捻転
精巣捻転とは、精巣に繋がる精索という神経・静脈・動脈など束ねられた管が捻じれて血流が止まり、強い痛みが急激に起こる疾患です。痛みの刺激で腹痛、吐き気などが生じることもあります。14才頃をピークとした思春期に好発します。はじめに触診で精巣の腫れをチェックし、それから超音波検査などで血液の流れを調べます。精巣捻転が疑われる場合、早急に陰嚢の皮膚を切開して、捻転を解除する手術を行うことが必要です。解除しても発症から24時間以上経過すると精巣の組織が委縮、壊死するため、精巣を摘除することになります(24時間以内でも捻じれの程度によっては委縮します)。陰嚢が痛いということを恥ずかしくて家族にも言いにくく、時間が経過してしまうことがありますが、その我慢の数時間が将来に関わることもありますので、強い痛みがあれば早急にご相談ください。
精巣上体炎
精巣上体とは精巣の上部に帽子のように付いている器官です。精巣で作られた精子が精巣上体に溜まり、精管(俗に言うパイプ)から精子が移動して最終的に射精されます。尿の通り道と最終的に繋がっているため、ばい菌が入り炎症を起こすことがあります。精巣上体で炎症が生じると、片方の精巣で痛みが起こりやすく、それと同時に精巣の腫れや発熱などの症状が起こる場合もあります。カテーテル留置やクラミジア尿道炎など原因が明らかなケースもあれば、原因が分からないケースもあります。鎮痛剤と抗菌剤を使って治療すれば1週間ほどで軽快してきますが、腫れが治まるまでに数ヶ月必要な場合があります。また、痛みが強い際は一時的に軽減させるために、陰嚢を冷やすことも効果的です。小児でも、生じることがあり、痛みと腫れがある際には精巣捻転と区別が必要になります。
精索静脈瘤
精索静脈とは精巣の周りを囲んでいる静脈であり、精索静脈瘤は左側にできることが多いです。立位やお腹に力を入れると血管が広がり分かることもあります。成人男性の5人に1人前後に認めると言われているため、珍しい病気ではありませんが、中年以降に急に発症する場合は腎臓のがんが生じてお腹の血管が圧迫され、精索静脈瘤が発症している場合もあります。基本的には、精索静脈瘤は良性の病気ですが、男性不妊に繋がる恐れがあります。軽症の場合は鎮痛剤などで経過をみていきます。痛みが強い場合や男性不妊の原因になっている場合は血管を結紮する手術が必要になります。
精巣損傷・精巣外傷
精巣が外部からの圧力で損傷すると、出血などとともに激しい痛みが生じます。内部の出血程度や膜が断裂していないかなど超音波検査で確認します。精巣表面の膜が断裂していなければ経過観察で問題ありませんが、出血がなかなか治まらなかったり、膜が断裂していたりする場合は手術が必要です。特にスポーツ中の事故で損傷するケースがよくあるため、注意が必要です。
陰嚢水腫
陰嚢水腫とは陰嚢の中に水が蓄積して腫れる病気です。痛みが生じることは稀ですが、放っておくと腫れが大きくなり煩わしい状態になります。治療では、まず、陰嚢穿刺(針を刺して水を出す)を行いますが、陰嚢穿刺は再発しやすくまた数か月すると水が溜まり腫れてくるため、何度も再発する場合は手術をご案内します。
ムンプスウイルスによる
精巣炎
ムンプスウイルスはおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の原因となるウイルスですが、精巣や卵巣の炎症も起こる場合があります。成人男性が発症しやすく、感染によって精巣炎を併発する方は2~3割程度いらっしゃいます。急激な精巣の腫れや痛み、発熱が起こり、精巣上体炎を併発する可能性もあります。また、男性不妊症に繋がるリスクもあり、確率は片方の精巣のみの炎症で約1割、両方の精巣の場合は約3割となります。現代医療では完治できる治療法は確立されておらず、鎮痛剤を使った薬物療法・局所の冷却・安静などの対処療法を行います。